弁護士の向原です。
前の記事の続きということになるのですが、株主総会というのは会社の最高意思決定機関ですので(国でいえば国会)、ここでの手続に不備があった場合、あとで
1 決議取消しの訴え
2 決議無効確認の訴え
3 決議不存在確認の訴え
の対象となる可能性があります。
では、どのような場合にどのような訴えの対象として問題にされるのか。少し整理してみました。
1 決議取消の訴えの対象となりうる場合
(1) 招集手続が「法令・定款に違反」又は「著しく不公正」といえる場合
例1 一部の株主に対して招集通知が欠落していた
例2 取締役会決議を経ずに代表取締役が招集した
例3 招集通知に会議の目的が記載されていなかった
例4 招集通知に記載されていた会議の目的の記載内容が不十分だった
例5 招集通知期間の不足
(2) 決議の方法が「法令・定款に違反」又は「著しく不公正」といえる場合
例1 決議の定足数不足
例2 取締役会設置会社で、招集通知に記載のない事項を決議した
例3 株主でない者が決議に参加した、あるいは正当な代理人の議決権行使を拒否した
例4 説明義務違反(株主の質問に不十分な説明しかせず決議を行った)
例5 株主にとって参加困難な時間・場所をもって総会招集した
(2) 決議の内容が定款に違反する場合
例 定款に制限された以上の数の取締役を選任してしまった
(3) 決議について特別な利害関係を有する者が議決権を行使したことにより、著しく不当な決議がなされた場合
ただし、招集手続や決議方法が法令定款に違反する場合でも、その違反が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさない場合は、取り消されないことになります。
2 決議無効確認の訴えの原因となりうる場合
例1 欠格事由のある者を取締役、監査役に選任してしまった
例2 株主平等原則に違反する決議
3 決議不存在確認の訴え
例1 株主総会の実態がないのに議事録だけを作成した
例2 取締役会設置会社なのに、平取締役が取締役会の決議に基づかずに株主総会を招集した(法348条3項3号、法298条1項。なお法349条1項但書参照)
いかがでしょうか?
日頃何気なく、株主総会でやってしまっていることはありませんか?
総会においても迅速な判断(機動性)は重要だと思いますが、あとあと手続上の問題が起きるリスクを孕んだ運営は危険です。
この機会に是非見直されてはいかがでしょうか。