仕事に疲れたところに、こんなニュースが流れてきました。

法科大学院の今年度入学者数 過去最低を更新
http://www3.nhk.or.jp/ne…/html/20160511/k10010517321000.html
「法律の専門家を養成する法科大学院の今年度の入学者は、1857人と過去最低を更新し、学生を募集した全国の45校のうち、入学定員を満たしたのは一橋大学と甲南大学の2校にとどまりました」

法科大学院への入学者がこれだけ減るとは、意外でした。
もう下げ止まってきたのかな、と思ったので。

司法試験合格者が、この数年は概ね1800人台なので、これで、法科大学院入学者数≒司法試験合格者数となってきました。

すると、「法科大学院に入れば司法試験に全員合格する(全入)のではないか?」という疑問が沸き起こります。

ただ、法科大学院入学者=司法試験受験者、ではなく、司法試験受験者の中には、前年度不合格者が混ざっています(滞留者)。
この滞留者がどの程度いるかをシミュレートするのが難しいのですが、そういう難しいことを若干捨象して、こういうテーマでちょっとしたシミュレートをしてみました。

「いつになったら、法科大学院入学したら誰でも司法試験合格するようになるか?」

ただし、こんな時間でもあり、ちょっと頭が眠い状態でもありますから、裏付け数値の収集が多少面倒なので、そこは今後フィックスするということでご勘弁いただくとして、シミュレートの基本ルールを、以下のとおりに設定しました。

・司法試験受験者(1)-司法試験合格者(2)=不合格者(3)、とする。

・失権者(4)は、H23の数値だけわかっているが、あとは収集するのが面倒だったので、H24以降はだいたいこんなもんだろうという予想値(1500人)とした。
ただし、理論的に、不合格者数以上に失権者数は増えないはずなので、不合格者数が1500人を下回ると予想されるH31年以降は、失権者数(4)=不合格者数(3)とした(緑色で塗りつぶされた箇所)。H32以降はそれが0人になります。

・翌年受験資格のある人(滞留者(5))は、不合格者(3)ー失権者(4)とした。

・法科大学院入学者数(6)は漸減すると仮定した。

・その年に新たに司法試験受験資格を得るのは卒業者(7)と予備試験合格者(9)であるが、卒業者数(7)は、面倒だったので、入学者数✕0.85という予想値とした。

・滞留者(5)+卒業者(7)=翌年受験予定者(8)とした。

・予備試験合格者数は、収集が面倒だったので、入れなかった。大体200~300人程度のオーダーと予想している。

・翌年度の司法試験受験者数(1)は、「「前年度の予備試験合格者数(予想値)」+翌年受験予定者(8)」とした。

・司法試験合格者数(2)は、漸減し、最終的に1500人になるとした。

なにしろ、司法試験受験回数が途中から3回→5回に増加しているので、失権者数が減っている年度がある=翌年の「1 司法試験受験者」数が増えるはず(H26とH27.の司法試験受験者数が、前年度の「9 予備試験合格者+翌年受験予定者(8)」に近似しないのはそのせいだと思います。

このように、予想値による部分が多いのですが、そのあたりはある程度目をつぶっていただき、以上の命題をもとにして、エクセルでざっくりと計算すると、こんなふうになりました。
↓クリックすると拡大

o0800020313643908915

法科大学院入学者数が漸減するにつれて、「1 司法試験受験者」がH30年度で激減することが予想されます。

すると、自動的に、滞留者も減ります(失権者はそれほど減らないのではないか。ちょっと疑問はあるが)。
すると、そのまま翌年の司法試験受験者も減少してゆきます。

司法試験受験者の減少にもかかわらず、日弁連はじめとしたしかるべきところは、司法試験合格者数は1500人以下に減らさせない方向で考えていると思われるところ、そうだとすると、司法試験合格者数減少のペースよりも、司法試験受験生減少のペースが上回ります。

また、上述枠内の「ルール」に記載しましたが、H32年から、不合格者数が、予想される失権者数を下回るので、すなわち、「滞留者(5)」が0になります(黄色で塗りつぶしたところ)。

すると、H32年の「2 司法試験不合格者」は、0人となります。
すなわち、この年に
「司法試験受験者数=司法試験合格者数」 すなわち   全 入

となります。

つまり、冒頭の命題

「いつになったら、法科大学院入学したら誰でも司法試験合格するようになるか?」

について、私の予想は、H32ということになります。

このときが、法科大学院制度を中核とする法曹養成制度の完全崩壊の年、ということになるのだろうと、私は思っています。

すでに崩壊しているじゃないか!というご批判もあろうかと思います。

が、少なくとも、日弁連は、「会員が一体となって(法曹養成制度=法科大学院制度)を成功させよう!!」というスローガンを、繰り返しFAXで会員に向けて流してきたので、そう考えていません。

そのような認識しかない団体に「崩壊」を認識せしめるうえでは、

「司法試験受験者数=司法試験合格者数」 すなわち   全 入

という現実を厳然と提示されるしか、術はないのだろうな、と思います。