一番難しい質問があります。
「弁護士をつけたほうがいいですか?」という質問です。
そういう質問が出て来る人は、下記のような感情をいだいておられる方が多いです。
1 原告側・・・「俺の権利は当然認められるべきだ。なのになんで弁護士費用まで掛けてまでやんなきゃいけないんだ」という怒り
2 被告側・・・「なんでこんな請求がされるんだ。なぜそんな認められるはずのないのが当然の裁判をブロックするのに弁護士費用とか余計な費用がかかるんだ」という怒り
要は、
「俺の言い分は絶対的に正しいんだ」
「なのになんで費用を掛けなきゃならないんだ」
という怒りの感情がそこにはあるのだと思います。
裁判の書面って、一見、ただの文章ですから、誰でも書けると思われがち、というのもあるのではないかと思います。
そこに「当然自分が正しい」という思いが入ると、
「弁護士なんか、入れなくてよくね?」
という結論に至ることは、想像に難くありません。
ただ、訴訟というのは、自分のいいたいことだけ主張しても、裁判所は聴いてくれません。
なので、理論的かつ冷静に対応する必要があります。
訴訟は生き物なので、相手方の主張立証次第で展開が変わります(ゲームと似ている)。そのあたりを想定し、先手を打ったり、また、取捨選択を図ったりする戦略が大切です。裁判所にどう自分の主張を納得させるかという戦略も大事です。
さらには法律上の主張も考える必要があります。
このとき「俺の言い分は当然認められる」という発想は、そういう場合もないではないけれども、「訴訟は生き物」ですから、展開によってそうとも限らないので、危険です。
しかし、そこには「Aから100万円を借ります B」とだけ書かれていた。
金銭は現金で授受したというのがAの言い分。
Bは金を返さず、Aは訴訟を提起した。
Aは「借用証があるし絶対勝てる!」と思ったのでしょう。
ところがBは「約束はしたけど、Aが金を持ってきてくれない。金銭授受していない」と主張しました。
こうなると、金銭授受の事実を、Aが立証しなくてはなりません。さあ大変。
Aが取った手段は「借用証があるんだから勝てるはずだ!」とだけ主張。金銭授受の事実については何らの主張立証もせず。
結果は・・・もうご想像のとおりです。
ということで、代理人弁護士を付けたほうが、
①訴訟戦略を立てる経験が豊富です。
こういう主張を相手方がしてくるだろうから、こう返そう、とか、こういう主張があったのでこう返そう、といったことを常に考えながら主張を組み立てます。
上記事例において、弁護士であれば「金銭授受の事実」が勝訴のために必要なファクターであることを知っているので、Bがそういうことを言ってくることを想定し、Aに「100万の金銭を銀行から引き出したりしてないですか」「どこで渡しましたか」などといった問いかけをして、勝訴のために必要なファクターを探り当てようと努めます。
その中で「自分は絶対正しい!」という「思い込み」を、代理人弁護士は、ある程度除去して、客観的な観点での戦略を立てられます。もちろん依頼者の利益に寄せられる戦略を立てますが、代理人弁護士の果たすべきミッションは「依頼者の最大利益」ですから、そのためには、客観的な視点もあって損はないはずです。
また、
②書面を書くという余計な精神的負荷を弁護士に投げることが出来ます(なお、書面を書く行為は、弁護士にとってもかなりの負荷です)。
だから、冒頭の質問があった場合には
「弁護士は付けたほうがいいですよ」
という回答をします。
ただ、費用の問題があるので、必ずしも強くおすすめはしないです。
が、自分自身で外科手術できないのと同じようなものです。
もっとも、私の経験則では、「自分は正しいはずだ!」という発想にもとづいて、自分の考えだけで押し切るような書面を書こうとしている人を見ると、総じて、良い結果出ている感じがしない、とは思います。