1 はじめに
当職は福岡県弁護士会の非弁取締委員・九州弁護士会連合会の非弁委員長・日弁連の非弁委員を現在拝命しており、もしかすると、非弁関連の情報や理論的問題に関する情報の集積量は、当事務所が九州内でも屈指かもしれません。
非弁問題は、いわば「医師でない者が手術する」ような問題です。が、日常業務と直接関係はないし、おそらく一般的にも関心が薄い問題ですから、あまりマスコミにも取り上げられることはありませんし、知られていないことが多いです。
それをあえてブログでアップするのには、若干の躊躇がありましたが、あまりにも取締の中で問題あるものが多いことに、若干、業を煮やしている部分があり、それで、敢えて、取り上げてみようと思いました。
違法な非弁行為の最大の特徴としては、弁護士から仕事を取るために使うフレーズがあります。
すなわち、行為をする人間が必ずいうこと(これまでの非弁取締の経験から)に特徴があります。それは以下の通りです。
(1) フレーズ① 弁護士はぼったくる
非弁事案をかなり見ているほうだと思いますが、実際はまったくそんなことはない。むしろ弁護士にやらせればワンストップで終わるところを、余分に金を取っている(交通事故後遺障害等級認定申請だけをやる人とか。弁護士はその前後の交渉等を全部一手にやってナンボで受任する)。
(2) フレーズ② 弁護士は事件を長引かせる・大げさにする
当然、事件のスジと依頼者の要望をよく聞いて、方針決定し、どの程度の時間がかかるかをある程度明示します。もちろん相手のあることだから目安です。紛争ですから。
そもそも、事件が一番早くあっさり終わる方法は相手の言い分を丸呑みすることです。しかし、そういうことを踏まえて早く終わることが常にいいことだという前提で話が進められることには、若干の抵抗感があります。
もちろん丸呑みでいいから早く終わりたい、でも自分では交渉したくない、というご依頼も一つの在り方として、コンセンサスがあればもちろんお引き受けさせていただきますが、相手方のあまりに理不尽な話については、当然、TPOを見ながらですが、丸呑みするべきではない、ということはよくあります。
(もちろん逆もあって、呑むべき条件が存在する場合は、そのことも説明します。依頼者側に不利益な点はちゃんと把握していただくほうが最終的には傷口を抑えられる)
大げさになる、というのは、軽い腹痛で薬でももらって帰るつもりが、実は重大な疾病が隠されていた、ということで、それはそれで治療が必要、ということと似ています。
ひとこと言わせていただくと、弁護士にとって最も儲かる事件は、「さっと終わる事件」「交渉をほとんどしなくてよい事件」です。
弁護士にとって、長引く事件は儲かりません。訴訟になるとコスパは悪いです。だから、わざと長引かせたり、訴訟に持ち込んだり、ということは、儲けたければしません。
依頼者にとって何が一番利益になるか(経済的利益のみならず)を、依頼者と協議して、そのTPOに合致する、ベターと思われる手続を一緒に考えて選択します。それが弁護士たる矜持と私は考えています。
依頼者にとって何が一番利益になるか(経済的利益のみならず)を、依頼者と協議して、そのTPOに合致する、ベターと思われる手続を一緒に考えて選択します。それが弁護士たる矜持と私は考えています。
(3)フレーズ③ 弁護士は話をちゃんと聞いてくれない、言うことをきいてくれない
(2)と逆パターンです。
当事者にとっては激痛のように思えても、われわれの目から(法律的に)見たら、全然心配ない事案もあります。
違法な非弁は、これを大げさに伝え、大きなフィーを取ろうとするという特徴があります。
あと、これは弁護士の聞き方もあるのですが、基本的に法的マターとしてどうするかを考えるのが弁護士の仕事なので、「法律的に関係のない事情」については、お話を聞くときでも捨象する傾向があります。これが、上手でないと、「話をちゃんと聞いてくれない」「いうことをきいてくれない」という悪評につながることがありえます。
ここは弁護士としても、必要なところを上手に聞き出しつつ、不要なところは不愉快を与えないように、対話技術を磨く必要があります。
2 なぜ問題か
弁護士会が、こういうことに対して敢然と反論する機会を作ってほしいなと思います。結局、1なんて、余分なお金を依頼者は取られるわけですから、消費者被害です。
こうやって弁護士をdisって事件を引き取って、予後がよかったという話は聞いたことがないです。結局混乱を深めて放りすてられているように思います。
法律相談には、そうしたケースがしばしば舞い込みます。
法律相談には、そうしたケースがしばしば舞い込みます。
3 弁護士会の対応について思うこと
非弁問題については、正直、まだまだ取り組みが進んでいません。
会においては、これを、消費者問題して問題意識を持っていただき、しっかりとした取り組みの環境づくりをしていただく必要があると思います。
また、当の弁護士が、仕事をキチッとすることも大切です。自分がちゃんとしてないのに、法律はこうなっているから、で人を責めるのでは説得力がないからです。これは自戒を込めて。