弁護士の吉井です。
行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律、いわゆるマイナンバー法が一昨年成立しましたが、今年10月から、同法に基づき通知カードが皆様の家に届き、来年1月より制度が開始されます。
マイナンバー制度は、社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関に存在する個人の情報を同一の情報として確認、活用するための制度ですが、「内容まで知っていた」は28・3%との報道(産経新聞平成27年2月19日記事)もあるように、まだ認知度が相当低いようです。
マイナンバー制度の認知度が低い一つの理由は、行政の手続に関する制度であり、民間には関係がないと思われているということが大きいのではないかと思います。
ところが、実はマイナンバー制度は、民間事業者において、いろいろな作業や管理を求められる制度であり、しかも、不適切な管理に対しては、特定個人情報ファイルを従業者が不当に提供した場合に4年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金が科されるなど、相当重い制裁が科されることもあって、民間事業者にとって無視できない内容となっております。
マイナンバー制度において、事業者が気を付けなければいけないことは、取得、利用・提供、保管・廃棄の各段階それぞれに存在しますが、ただ、まず気を付けていただきたいのは、従業員がいればそれだけでマイナンバー法の適用を受けるということです。
また、マイナンバー法は、情報の扱いという面では、個人情報保護法の特別法としての性格をもっていますが、個人情報保護法のように小規模事業者の除外規定がありませんので、日本中のほとんどの事業者に適用されることになります。
そこで、これまで特に個人情報保護法に従った管理を行っていなかった事業者は、最初からそのような管理策を整えなければならなくなり、そこでは大きな混乱が生ずることが予想されます。
もう一つ気を付けていただきたいのは、この制度は、税法でも福祉関連法でもなく、大まかにいえば、行政の円滑化と、本人のプライバシー保護を目的とする制度であるということです。その意味で、ご相談いただく際は、租税法や福祉関連法ではなく、情報法に明るい法律家を選択していただくことが肝要といえます。
通知カード配布まであと5か月弱、番号制度の開始まであと7か月弱しかありません。早めの対策をお勧めいたします。
なお、この制度に対する対処法については、内閣府において、事業者用のガイドラインが用意されています。当事務所では、マイナンバー制度を含む個人情報保護法制に関するご相談、社員教育などについても承っておりますので、お気軽にご連絡いただければと存じます。