いわゆる「2018年問題」というのが、労働法務界ではあります。

これを説明する前提として、労働契約法の改正があります。
つまり、平成25年4月1日以降に雇用された「有期雇用社員」が、同一の使用者(企業)との間で、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みによって無期労働契約に転換される「無期転換ルール」が本格的に適用されます。

すなわち、平成25年4月1日に雇われ、何回も反復更新された人は、平成30年4月1日になると「通算5年」を超えるので、労働者側の申込により、無期労働契約に自動的になるのです。

すると、雇用主側が、無期労働契約への転換を嫌って、有期雇用社員を平成30年3月31日までに雇い止めにしてしまおう、という動きが起きます。

この動きが「2018年問題」であり、「無期転換逃れ」とも言われています。

典型例として、最近報道されたこの問題があります。

「法テラス」地方事務所でも230人が雇止め〜広がる「無期転換逃れ」http://www.labornetjp.org/news/2017/1225kiji

法テラスというのは、契約弁護士との間で弁護士等の費用を立て替えたりすることを役割とする団体です(私は契約しておりません)。
いわば、法律にかなり近接し、法律の恩恵を市民に広げることを理念としている団体のはずなのですが、こういう問題が起きています。

ところで、有期雇用社員なら、いつでもこうやって簡単に雇い止めができる、と勘違いしている人は少なくありません。実は全然そんなことはありません。

雇止めが有効か否かは、労働契約法第19条(雇止め法理)に基づき判断されます。
そして、その有期労働契約が次の①、②のいずれかに該当する場合で、その雇止めが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないとき」
には、その雇止めは無効となります。
①過去に反復して更新された有期労働契約のうち、その雇止めが無期労働契約における解雇と社会通念上同視できるもの
②労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるとの合理的期待があると認められるもの
※①②に該当するか否かは、当該雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続の期待を持たせる使用者の言動の有無などを総合的に考慮し、事案ごとに判断されます。

たとえば、上記②について、当該従業員に無期転換申込の権利が発生する有期労働契約の満了前に、一方的に、更新年限や更新回数の上限などを設けたりして、無期転換申込の権利が発生する前に雇止めをする場合や、再度有期労働契約を締結するとの前提で、一旦雇止めをする場合(形式的には「反復継続」が途切れるから、無期転換ルールが従業員に発生しないように見える)は、無期転換ルールを避ける目的でされていると認定されるリスクがあるので、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない」と考える余地が出てくるでしょう。

雇止めが無効とされた場合、従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されます。
→無期転換ルールによって無期労働契約の申し入れがされたら、無期労働契約となります。

労働者側からも、会社側からも、この点についてのご相談が増えています。
現在は有期雇用社員の割合の高い会社も多いので、この点のリスクマネジメントは会社側でも大事ですし、労働者側においても、不当と思われる雇止めについては、直ちに諦めるべきではないと考えます。